(C)固定資金
固定資金とは、長期間にわたり、安定して、使用することができる資金です。
固定資金の運用は、長期にわたり、資金が固定化してしまいますので、投資の効果について慎重に検討して投資すべきです。
投資の運用いかんが、会社の命運を左右してしまいます。
固定資金は、
調達勘定科目 | 資本金、資本準備金等(自社資金) |
長期借入金、設備未払金、社債等(外部調達) | |
運用勘定科目 | 棚卸資産 |
有形固定資産、無形固定資産、投資等、繰延資産等 |
の4つにわけられます。
a.棚卸資産について
小売業も製造業も、常に、ある一定の棚卸資産を保有しています。
このことから、資金会計理論では、棚卸資産を、固定資金の運用として取り扱っています 。
b.減価償却費について
減価償却費は、非現金取引ですので、費用として計上されますが、現金の支出はありません。
利益は、減価償却費を差し引いた分だけ減少しますが、現金は、実際に支出されていませんので、現金が、減価償却費の分、会社に残 ることにな ります 。
資金会計理論では、二つの処理方法があります。
(1)固定資産から減価償却費を引いて簿価表示する方法
(2)取得価額と減価償却累計額を両建てする方法
二つの処理方法を説明します。
二つの処理方法を、わかりやすくするため、減価償却費を独立表示しています。
販売費一般管理費に、減価償却費は、含まれていません。
(1)固定資産から減価償却費を引いて簿価表示する方法
現預金 | 損益資金 | |||
その他 | 30 | |||
差・繰越損益等 | 30 | |||
売上原価 | 150 | 売上 | 200 | |
販売一般管理費 | 20 | 営業外収益 | 10 | |
減価償却費 | 5 | 特別利益 | 0 | |
営業外費用 | 2 | |||
特別損失 | 0 | |||
63 | 運用計 | 177 | 調達計 | 240 |
固定資金 | ||||
棚卸資産 | 5 | 長期借入金 | 30 | |
固定資産 | 85 | 設備未払金 | 0 | |
投資等 | 0 | 社債 | 0 | |
資本準備金 | 5 | |||
資本金 | 45 | |||
▲10 | 運用計 | 90 | 調達計 | 80 |
固定資産の取得価額は、90ですが、減価償却費を差し引いた85が表示されます。
この方法では、
減価償却費 / 固定資産
の仕訳が、されています。
これによって、固定資金の運用が減り、固定資金の現金が増加します。
(2)取得価額と減価償却累計額を両建てする方法
現預金 | 損益資金 | |||
減価償却累計額 | 5 | |||
その他 | 30 | |||
差・繰越損益等 | 35 | |||
売上原価 | 150 | 売上 | 200 | |
販売一般管理費 | 20 | 営業外収益 | 10 | |
減価償却費 | 5 | 特別利益 | 0 | |
営業外費用 | 2 | |||
特別損失 | 0 | |||
68 | 運用計 | 177 | 調達計 | 245 |
固定資金 | ||||
棚卸資産 | 5 | 長期借入金 | 30 | |
固定資産 | 90 | 設備未払金 | 0 | |
投資等 | 0 | 社債 | 0 | |
資本準備金 | 5 | |||
資本金 | 45 | |||
▲15 | 運用計 | 95 | 調達計 | 80 |
損益資金欄には、減価償却費5と減価償却累計額5が、両建てで表示されます。
固定資産は、取得価額で表示されます 。
(1)の方法も(2)の方法も、損益資金と固定資金の現預金の合計額は、一致します。
会社に残るはずの、毎年の減価償却費に該当する現金は、長期借入金の返済などに使われ、実際、減価償却費の分、会社に残っていないのが、通常、ではないでしょうか。
これは、私の考えですが、(2)の方法では、損益資金が、過大に表示されるように思われます。
(2)の方法では、固定資産の廃棄・売却などで、多額の減価償却累計額が減少し、損益資金を、大幅に減らしてしまいます。
また、固定資産の運用額も、取得価額分だけ減少し、固定資金が大幅に改善されます。
(2)の方法では、変化が、大きくなりすぎる可能性があります。
それよりも、(1)の方法では、固定資産の廃棄・売却による影響は、固定資産運用額の変更だけに止まり、(2)の処理方法よりも、影響額が小さくなる、と思われます。
資金会計理論の考え方から行けば、引当金の処理と同じ考え方が、できますので(2)の処理方法が考えられます。
ですが、通常は、(1)の方法が使われています。
(D)流動資金
流動資金とは、損益資金、固定資金、売上仕入資金以外の資金で、超短期的な資金の調達・運用を表したものです 。
流動資金の調達源泉の主なものは、短期借入金です 。
資金繰りが逼迫している場合には、調達源泉としては、この短期借入金が中心になります。
そのような場合には、資金調達がうまくいかないと、倒産に至ることになります 。
流動資金の
調達勘定科目・・短期借入金、預り金、未払費用、仮受金等
運用勘定科目 ・・未収収益、有価証券、仮払金、短期貸付金等
です。
現預金 | 流動資金 | |||
未収収益 | 短期借入金 | |||
有価証券 | 預り金 | |||
仮払金 | 未払費用 | |||
短期貸付金 | 仮受金 | |||
運用計 | 調達計 |
(E)安定資金
安定資金とは、損益資金、固定資金、売上仕入資金、の三つの資金の合計額をいいます 。
安定資金は、0より大きくなければなりません。
安定資金が、マイナスですと、資金繰りが大変なことになります。
これについては、後で説明します。