概要

損益計算書は、経営成績を、貸借対照表は、財政状態を表していると、通常、言われています。
貸借対照表は、分かりにくいというのが、皆さんの感想でしょう。
貸借対照表は、流動比率、固定比率、自己資本比率など、経営分析の指標で分析されます。

私が紹介する資金会計理論では、全ての取引(非現金取引を除きます。これについては、本編で紹介します)が、現預金(以下現金という)を、伴う取引と捉える考え方で、今までの貸借対照表の捉え方と違う新しい視点からアプローチしています。

例えば
① 売掛金 1000  /  売上 1000
➁ 仕入    300 /  買掛金 300
③消耗品費   20 /  未払金  20
これらの取引は、何れも現金を伴っていません。

資金会計理論では
①は、
現金  1000 / 売上 1000
売掛金 1000 / 現金 1000

➁ は、
仕入   300    / 現金 300
現金   300   /  買掛金 300
③は、
消耗品費  20 /   現金 20
現金     20  /  未払金  20

と、処理していると考えます。

(注)仕訳で、現金が左側にあると現金の増加、右側にあると現金の減少を意味しています。

こうすることで、実際に、現金の動きがなくても、 現金を伴う取引として、扱うことができるようになります 。

全ての取引が、現金を伴った取引ですから、損益計算書で計算される利益は、獲得した現金の額になります。

また、貸借対照表の右側は、現金の収入の欄で'(仕訳の左側の相手勘定が、現金になっていますので。)、現金がどのようにして調達されたか、を示す一覧表になります。
左側は、現金の支出欄で、現金が、何に、いくら使われているか、を示す一覧表です。
右側の収入から、左側の支出を引いたのが、貸借対照表における現金の残高になります。

貸借対象表は、収入と支出を示す一覧表である、ということが分かりましたが、このままでは何も分かりません。

2.そこで、資金会計理論では、 貸借対照表を、資金の性質によって、四つのグループに分類します。

一つ目は、企業経営によって獲得した、創業以来の利益を表す損益資金

二つ目は、事業活動において信用取引が行われると思いますが、それによって生じた、売上債権、買入債務の売上仕入資金

三つ目は、 株主の払込金や長期借入金などの、長期的に使用することが可能な固定資金

四つ目は、上記三つ以外の超短期的な資金の流動資金

の四つのグループです。

この四つの資金のグループで、貸借対照表を捕らえているのが、資金別貸借対照表です。

3.ニュー資金別貸借対照表では、さらに、固定資金を三つに区分して、貸借対照表を捉えます。

ニュー資金別貸借対照表の概要を、まず、説明します。

ニュー資金別貸借対照表では、今までに獲得した損益資金と、株主が払込みした資本金・資本準備金を、合計して、会社が所有している現金の額、会社の持分を算出します。

その持分を使って、固定資産への投資がなされ、固定資産の投資後の資金の残高を計算します。

通常の会社は、マイナスになりますが、それを、長期借入金等で補填することになります。

このように、借対照表を捉えて、会社の財政状態を、明確にしようとするのが、ニュー資金別貸借対照表です 。

4.ニュー資金別貸借対照表を、順を追って、説明していきます。

損益資金は、会社の設立から今までに獲得した現金ベースの利益の額を示しています。

ですが、信用取引によって、利益の全額を、現金として獲得しているわけではありません。

(買入債務ー売上債権)の額だけ、手取り額は増加・減少しています。

損益資金と売上仕入資金の合計額が、手取り額になります。

この合計額を、継続損益資金といいます。

これから先の説明は、固定資金の説明になります。

資金会計理論では、棚卸資産を、固定資金と捉えています。

事業活動するためには、一定の棚卸資産は、固定的に保有されていると考えるからです。

(継続損益資金ー棚卸資産)は、実質損益資金と呼ばれます。

実質損益資金が、事業経営によって獲得された、自由に処分することが可能な最終的な、現金ベースの利益の額です。

この実質損益資金に、株主が払込みした資本金・資本準備金を加えたものが、会社の持分になります。

これを、真正損益資金と言います。

この真正損益資金を、用いて、設備投資を行います。

設備投資後に、残った残高が、正味損益資金と呼ばれます 。

普通の会社では、正味損益資金は、マイナス残高になる、と思います。

このマイナスを、長期借入金等で、補填し、プラスの残高にしているのが、通常の会社です。

以上のように、貸借対照表を捉え、会社が、どのような財政状態なのかを、判断するのが、ニュー資金別貸借対照表です 。